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「此処が幻想郷です。千年<チトセ>様」
隣でそう言った私の従僕は私の後ろへ三歩下がる。
「ここは、風が気持ちいいな。八尋<ヤヒロ>」
「はい。千年様はこの地をお気に召されますでしょうか?」
「気に入らない訳がないだろう?私の従僕が無理に無理をして連れてきてくれた場所なのだから」
「ありがたき御言葉。感謝の極みでございます。千年様」
肩に掛かる漆黒の髪をだらんと前に垂らし頭を下げる八尋の右目が爛々と輝く。相変わらず八尋の髪は長いな。私も目が隠れているがな。
「私が喜ぶとお前も同じように喜んでくれるな。八尋は優しいな」
「それは千年様が生まれた時から御側で世話をさせて戴いているからです。私は、貴女なのです」
そう言い八尋は笑顔で額の右側に生えた一本の『角』を触る。
「では千年様。行きましょうか」
「そうだな」
「初めましてだな、幻想郷!私はかつて貴様の背骨と天狗を束ねていた四天王が一人、虎熊童子の一人娘……
幻想となった『鬼』の虎熊 千年であるっ!」
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