◇小さき溝

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そもそも、俺は佐奈が好きなのか?いや、気になりはする。気になりはするが、好きというほどなのか……。 「あ、それに『馬鹿なの?死ぬの?』ってつけてくれ」 というか、好きってなんだ?恋愛の定義は?あれ?そういや、前に毛利が恋と愛は違うとか言ってたような……。 「すまん、ちょっと電話してくる」 そう言って亮が立ち上がろうとすると、 「馬鹿なの?死ぬの?」 「……え?」 「「あ……」」 空気が凍った。 「あんたが余計なこと言うからっ!死ね!死ね死ね死ね!」 扉の向かい側。亮の部屋では、きっと星太が踏み潰されているのだろう。先程から物凄い音が廊下にまで聞こえてきていた。 『おい、なんで北条の怒鳴り声と星太の悲鳴が聞こえてくるんだ』 電話相手の毛利にまで聞こえる始末。 「いや、そんなことはいい!そんなことはいいんだっ!」
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