◇小さき溝

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『――とまぁ、こういう定義だ。じゃ、"がんばれよ"』 長く続いた輝夜の講義ののち、輝夜はそう言い残し電話を切った。 がんばれよ。あいつ、全部わかってたのか。亮は一瞬照れ笑いを浮かべるが、表情を引き締めてドアを開ける。 すると、身を乗り出す佐奈と壁際まで追い込まれる星太がいた。 「……何やってんだ?」 「おおっ、亮。助かった――じゃなくて、お、俺、一旦家帰るわッ!帰って……ええっと……物理と英語……あ、保健体育の宿題持ってくるわ!んじゃ、またっ!」 ドアの前に立つ亮をどかし、慌てて部屋を出ていく星太。 些か計画より早いのでは?と思いつつも、亮は座布団に座った。そして気がつく。佐奈と二人っきりということを。 「ねぇ……」 「お、おう……」 恥ずかしさから、佐奈を見れず床を見ながら答える亮。その頬は昼時なのに、やや茜色に染まっている。 そして、佐奈の唇が動き、言葉を紡ぐ―― 「その、どんな恋愛小説を読んでるの?」
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