◇小さき溝

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「なんだか懐かしいね。二人でこの部屋にいるのも」 「そうだな」 「あの頃は亮の趣味で、毎日和服着てたっけ」 「……嘘だろ?」 「はぁ?自分でやらせといて忘れたの?……最低」 佐奈からは軽蔑の眼差し。話は切れた。 亮は疲れた身体を横にして本を読み始めた。星太の作戦も糞もない。やってられないとばかりに手に取ったのは、買ったばかりの三国志の小説。といっても、作者が違うだけでシリーズとしては五作目にあたる。 一方、佐奈も何か読むものを探しているのか本棚へ。そして、机、ベッドの下――、 「って、何やってんだ、くそアマっ!」 「いや、ちょっと好奇心で。亮も思春期だし、そういうのあるかなぁ、って」 「馬鹿か。星太じゃあるまいし」 「あぁ、確かに星太の部屋にはあったわね」 「だろ?全くあいつと一緒に――って、ちょっと待て!」
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