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「何よ、うるさいなぁ」
佐奈の唇が尖る。機嫌が悪くなった時の癖である。しかし、それでも亮は聞かねばならない案件があった。
「せ、星太の部屋に、は、入ったのか……?」
今日一番の難問。恋と愛の違いなど並べるまでもない。
一瞬、尖った唇が引っ込み、きょとんとした佐奈だが、ぷっ、と笑い出す。
「わ、笑い事じゃねぇよ!
男の部屋だぞ?いくら星太の部屋とは言え……いやむしろ、星太の部屋だぞ?あの地で何人の女が抱かれたか……。そ、そんなところに――」
「中学の時よ。しかも、あんたもいたでしょ」
「へ?」
「忘れたの?葉月さんに高校の話を聞きに行ったときよ」
葉月とは星太の二つ上の姉である。そう言われてみれば、と亮は思い出す。中学の時、高校を決めるのに生徒会長である葉月さんの話を聞きにいったな、と。
なんだあの時の話か。亮は安堵の息を吐き、机に倒れ込んだ。
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