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この戦、勝ったも同然。ふ、三成よ。文官風情が調子に乗るから裏切られるのだ!
などと、頭の中で考えている亮だが、それでも再度、
「ありがとう」
と口にする。それに佐奈は元々赤かった顔がさらに赤くなる。
これは……、と亮も息を飲む。四人並びに同じ部活の女子である奈良と吉川すらも言っていた、進軍の狼煙。まさしく桶狭間の奇襲すべきタイミングッ!
しかし、いけるか。いけるのか。……いや、為せば成る。為さねば成らぬ、何事も!
「ちょっ……」
亮はテーブルを押し退け、佐奈の肩に手をやる。そして、ゆっくりと、そして迷いなくその桜色の唇に自らのそれを近づけていく。
その瞬間。世の中が百八十度変わった気がした。いや、事実変わった。
何故なら――亮は佐奈に投げ飛ばされたのだから。
「最低っ。そんな人だとは思わなかった!」
去り行く佐奈。百八十度変わった世界で亮は思う。俺はどこで間違えたのか、と。
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