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我が国には、平安より始まり明治に滅びていった者達がいた。名を、武士という。
武士とは単に身分だけを指すものではなく、武士道と称される倫理があり、それに乗っ取ってこそ真の武士と言えるのだ。
時は平成。明治維新より、およそ百五十年後の日本国。そんな武士道に従い生きる、若き日本男児がいた。
築二十年近くになる道場で、いつもは鳴り続けている竹刀の音が静まり返っていた。
代わりに聞こえるのは、二人分の裾を引きずる音と、数多の息を飲む音のみ。
竹刀を中段に構える両者が身につけるのは最低限の防具のみで、加えるならば気迫を纏っているかのようであった。
間合いを取りつつ、型を変え、互いの動きを観察する。そして、隙ありと見たのか、中年の男が勝負に出た。
「はぁっ!」
まるで滝の流れ落ちるかのように力強い一刀が剥き出しの頭に襲いかかる。
「やぁっ!」
――が、相対していた少年は、それを防ぐことなく必要最低限の動きで避けると、相手の胴の防具目掛けて鋭い一撃を放ち、勝敗を決した。
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