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「「おおぉぉぉお!」」
その鮮やかな勝ちに、少年の仲間たちからは途端に歓声が沸き上がる。
「……参りました」
まさか負けるとは――しかもこれほど綺麗に――思ってもいなかった男は、皺が見え始めてきた顔に苦笑いを浮かべ、少年に告げた。
「まさか負けるとは思わなんだ」
とある名門の師範である男は、先程打たれた腹を擦りながら、長い付き合いになる他門の師範と語り合う。
「ははは。私も近頃は竹刀がかすりさえしませんよ」
勝利した少年の師である彼もまた、男と同様な気持ちであることを告げる。
その少年はというと、道場の隅で仲間達に囲まれながら、師範の一人娘で幼なじみでもある同級生と楽しそうに会話をしている。
その光景を見た男は、
「佐奈ちゃんも大きくなって。確か歳は……」
「十七です。亮と一緒です」
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