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「ほぉ、もうそんなに……。いやいや、ということは何かね。私は十七の少年にこてんぱんに伸されてしまったわけか」
男は驚いたふうで少年を見る。それから、背も高く物腰も落ち着いていることから、てっきり二十歳近くかと思っていた、と口にした。
しかし亮の師範は、それは些か、と苦笑いを返す。
「あれは特別です。時代が違えば、さぞかし名のある剣客になったでしょう」
「特別、と言えば、君。佐奈ちゃんにも最近負けているようじゃないか。弟子たちが口にしていたぞ」
「はは。これは恥ずかしい」
佐奈の父親であり、師でもある彼は、面目なさそうに頭をかいた。
「どうだった?」
同門の仲間達と試合について話していた亮に、佐奈はタオルを渡して声をかける。
「サンキュ。やっぱり名人だけあって強かったと思う」
タオルで汗を拭きながら亮は答える。
「あぁ……。あんた打ちにくそうだったものね」
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