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「いや……何でもない……」
俺は彼女から視線を逸らしながら、そう小さな声で言い返していた。
はっきり言って、あまり人と話す事が苦手だ……
ましてや、新しく来た学校が怖くて足がすくんでいたなんて……
情けなさ過ぎて言える訳がない……
むしろ、全く制服の違う俺に話し掛ける彼女の考えがおかしいと思っていた。
しかし……
「もしかして、転校生~?」
彼女は何も疑う事も無く、俺に聞いてきた。
「あぁ……そうだけど…」
「学校、始まるよ~?」
「そうだな……」
「じゃあ、早く行こうよ~」
俺がそんな彼女に戸惑いながら返事をすると、彼女は突然笑顔で俺の手を握ると元気良く走り出した。
その事に俺は、ただただ顔を赤くするしか出来なかった……
「ちょ、ちょっと……
待てって……」
「いいのいいの~。
この"桜道"、思っている以上に長いんだから、走らないと間に合わないよ~」
戸惑う俺をよそに彼女は、笑顔で俺の手を引っ張り続けていた……
そんな彼女の言葉に、俺はふと辺りを見渡すと、そこには春らしい鮮やかに咲き乱れる"桜並木"が一面に広がっていた。
そんな中を俺達は手を繋ぎながら走っていた……
校舎にまで続く……
長い長い、『桜道』を……
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