厄介な相談

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見頃を終えた桜は、すっかり花びらを散らして、寂しげな姿を私たちに向けてたたずんでいる。 足元には白に近いピンク色の花びらが、皆に踏みつけられてぐちゃぐちゃになっていた。 春と梅雨の間のこの時期は、私の気分をもやもやさせる。 晴れているのに足元はぐちゃぐちゃで、爽やかな風が吹いたかと思えば急に生暖かい風が来る。 「ああ、気持ちわるい…」 私が呟くと、傍らで友人の知美が前から顔を思いっきりのぞき込んでくる。 「気分悪いの?」 「あー何でもない。ちょっと言ってみただけ」 真顔で言う私に、知美は『いつものことか』という表情で、笑いかけた。 「香絵、せっかくのキャンパスライフが台無し。ツライ受験戦争乗り越えてやっと大学生になれたんだからさぁ、もっと明るく行こうよ!」 そう言って知美は私の肩をパシンと叩く。 高校時代の制服を脱ぎ捨て、ほんのり化粧をした『大学生』の知美は、すごく眩しく見えた。 中学から高校に上がったときは何とも思わなかったのに、どうしてだろう? 『大学生』って響きが、「いつまでも子供じゃないんだ」と急かしているようで、私はなんだか居心地が悪い。 世間では一番お気楽な身分と思われているが、その自由な感じが逆に私を焦らせた。
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