厄介な相談

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私たちは講義の合間の空き時間に、ひたすら構内を探索しながら歩いた。 便利のよい街中にあるだけあって、人気もあり偏差値もそう悪くない。 この大学の名前を出せば、一目置かれるぐらいのネームバリューはある。 不都合なのは、大して広い敷地でないのに、正門から一番奥のグラウンドまでがものすごく遠いこと。 つまり細長い作りをしていて、端から端まで歩くと20分はかかる。 休み時間は15分しかないのに、と皆ブウブウ言っていた。 そんな大学の中心をまっすぐに延びる道、通称『ドロン通り』を、私と知美はあてもなく歩いていた。 この妙な通称の由来。 それは次の教室に向かってるつもりが、長い長い道が途中でイヤになってつい講義を『ドロン』してさぼってしまう…という噂から付けられた、何とも安易なものだった。 私たちがドロン通りをふらふらと歩いていると、前方からこちらに大きく手を振り、フワフワした足取りで翔けてくる女の子の姿が見えた。 長年愛用しているコンタクトの度が合っていない私には、彼女の風になびく長めのウェーブや、カラフルなワンピースのぼんやりした柄しか見えない。 ゆっくり目を凝らしていると、隣の知美の方が先に反応して手を挙げた。
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