殺し屋に

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 うちは、気ままにドライブを楽しむ事がある。今日もたまたまそんな気分になり、独り愛車を海岸線へ走らせた。  我家は山あり海ありの田舎にあるので、その気になれば山道を攻めにも行ける環境なのだ……どうでもいいな、あは。  自慢じゃないが海はかなり澄んでいて綺麗なんだよ。そんな海岸沿いの道を走ると気分も爽快になる。  うちは、サーファーも来ない海岸線に車を乗り捨て、岩だらけの波打ち際に降りた。時々来る海なんだけど、人が全くいないと景色を独占した気分になれる。  日焼け防止の手袋もしたまま、ちょっとした幸せに浸っていると、黒いスーツにサングラスをかけた場違いな男が現れた。  こんな奴が現れると、せっかくの海独占気分も台無しになってしまう。別の場所に移動しようと腰を上げた時。 「待て。貴様、サユリだな?」  不躾に名前を呼ばれると気分を害すると言うよりも気味が悪くなってくる。 「人違いじゃないですか? …………!」  立ち上がりかけたうちに、男はポケットから銃を取り出した。しかもそれをうちに向けて、じわじわと近寄ってくる。 「俺は、とある人間に貴様を葬るよう頼まれた者……」 「何ですと?」  誰だよ、とある人間って?  なんて聞いても答えは返ってきそうにない。 「だがな、俺にも多少の人情はある。死に方くらい選ばせてやるよ」  マジッすか?  うちは腹を括った。 「解ったよ、解った。人にヤラレルのは嫌だからそれ貸して」  うちは、自殺するつもりで手を差し出した。彼は少し考え、銃を差し出す。 「……使い方分かんないんだけど。引金引けばいいの?」  受け取った銃はかなり重い。だんだん冷や汗が出てくる。知ってか知らずか、男はふふんと鼻で笑った。 「馬鹿な奴だな……安全装置を外せよ」 「これかな?」 「そうだ」  カチンと弾く音と共に安全装置が外れる。 「弾入ってんの?」 「往生際の悪い奴だな……当たり前だ」 「……分かった。撃つとこ人に見られるのは嫌だから、横向いててよ」 「横でいいのか、あっ」  パン!  男がのけぞって倒れたところで、うちはちゃっかり銃を握らせた。いやぁ、日焼け防止手袋様様だよ!  ……手袋は海水溜まりのあるテトラポットの隙間に押し込んで、うちはさっさと車道に戻り、車を発進させたのだった……  誰が差し向けたのか知らんけど、残念だったね~♪
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