理想の異性が

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 どうするよ、ねぇ……とりあえず、彼も実家に連れて行くか……うちには飼主様がいるから、家に連れて帰る訳にはいかない。  実家に帰れば、父に先立たれて伸び伸びと第二の人生を謳歌している接待好きの母がいる。  若いツバメて役で可愛がって貰いな。うちが拾ったうち好みの彼だけど。  ……んで、実家に帰りつくや、母はまず、見慣れぬ男をしげしげと見つめた。 「あんた、浮気相手じゃなかよね?」 「ぶっ……彼は記憶喪失の行き倒れやけん。何かご飯食べさしちゃり」  うちがお人好しなら、母もお人好し。事情を話すと、食卓は見るまに母ご自慢の手料理皿で埋まった。 「はい、お食べ。足らんかったら、作り足すけんね」 「母さん……これだけあって誰が足らんて言うとね? まぁこれはいつもの事なんだよ、座って」  うちは呆然と立ち尽くしていた彼に椅子を勧め、箸を持たせた……  約二週間後。警察から連絡が入り、うちは実家に置いてきた母のツバメ……じゃなくて、習得物の彼を迎えに行った。  警察署には彼の家族が迎えに来ているらしい。その事を彼に告げると、 「分かりました。マキコ(母)さん、お世話になりました」 「またご飯食べに来なさい」  別れ際にもご飯かよ、ママン…… 「サユリ(うち)さんもありがとう」 「いえいえ、どういたしまして」  警察署が近付いてくると……彼は急にそわそわし始めた。 「俺、やっぱり帰りたくない。サユリさん、一緒に……」  きたー! お約束の展開だよ! 「ごめんねぇ、あんたはうち好みの男やけど、偶然うちが拾っただけやし、それにね」  うちにはラブリーな飼主様=夫がいるから、いくらイケメンの君に誘惑されても心揺るがなくてよ、ふっ……  うちは、せっかく自分にも懐いていた『うち好みの彼』を不幸のドン底に突き落とし、警察署に送り届けたのだった。  めでたしめでたし♪
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