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客、うち一人だよ……実を言うと、人物画をしみじみ見るのは好きじゃない。
どちらかと言えば嫌い。じゃあ何故見に来たと言われても困るけど……人混みに紛れて見るのは、ほら、名画だし……ねぇ。
いろんな作品を流して見つつモナリザの額縁に近付く。ふと視線を感じて顔を上げた。
ん?
視界に飛び込んできたのは、あの謎めいた微笑み。
顔分析によると、半面が悲しみor怒りで、半面が喜びという複雑な表情らしい。
人が本当にそんな表情を作ろうと思ったら睨めっこになってしまう。
笑うと負けよ。
今度はハッキリ視線を感じて、うちはモナリザの絵の前に立った。
あんまり凝視していると…………一人で見ているせいか、気味が悪くなってくる。
監視員もいない中、たった一人で、人物画に向き合うと言うのは、ある意味肝試しに近いものがある。
あっぷっぷ。
まさにドアップでモナリザを見る。絵の具のヒビワレは肌荒れのようにも見えるし、なによりその目付き。
どこを見てるか判らないような目付きなのに、どこから見ても見つめられ…………え?
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