ある日

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 舞台袖から現れたのは、スレンダーな外国人のお兄さんだった。お約束のモーニングスタイルで颯爽とうちの側に近付いて、会場は拍手に包まれる。  残念ながら最近の若いピアニストの名前を知らないうちは、若い彼の顔をしみじみ見る前に……側に寄られ、その長い足しか見えなくなった。  彼は深くお辞儀をし、逆さの椅子に腰をかけた。そして、片足の先が軽く髪に触れる。  うっ……目の前に股間が来るとは……  考えてもごらん。うら若き乙女の年なんてとおに過ぎて、もう少しで熟女の域に入ろうかというブリッヂ女の目と鼻の先に、若い男の股間。  下ネタでごめんなさい。  うちじゃなくても、ミョーな気分になると思うんだけど……  うちの気持ちを知ってか知らずか、彼は静かに……多分両手を……歯の上に乗せ、大きく息を吸うやいなや、力一杯髪を踏みつけた!  ぎにゃーっ!  ……髪を踏まれる事数千回、歯をガタガタにされる事無限大!  目の前の股間は、やっと立ち上がった……  グランドピアノって、 ……偉い。(何か違っ)
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