もしも

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 その看護婦さんを、いつもは見上げているのに、今は……自分も合わせて見下ろしている……  なんで?  看護婦さんはうちに声をかけながら左手首をつまんだ。脈がちゃんと取れないのか、何度も握り直す姿が見える。 「サユリちゃーん? もう起きないと、夜眠れないよー。起きなさーい」  起きようにも、自分は何故か天井付近に『浮いて』いて、返事をしようにも声も出ない。  看護婦さんは目を閉じているうちの瞼をつまみ上げ、ポケットからペンライトを取り出して目に当てた。  それから、ガバッとビニールカーテンをはぐって無菌室を走り出てしまった。  ……何だか大変な事になったらしい……と、他人事のように思ったうち。呑気と言うかアホと言うか。  天井に浮いていたうちは、もう一度自分の体に近付いてみた。頬に触ってみると、異様に冷たい。  ……え?  この時ようやく、自分の現状を理解したうち。慌てたものの、どうやって体の中に戻るかが解らない。
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