†…D/L…†

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          ──…チリン      チリィ…ン── 1Kの小さなアパートの中。 彼女は心地良さそうに目を細めながら、その音色に耳を傾けて細い指で鈴を弾く。 寝転びながら身体を丸めるようにして。 やわらかな陽射しを全身に浴びて。 淡い空色と真綿のような雲に目を細める。 開け放たれている窓からは、優しい風が畳の上で無造作に広がる長い髪を靡かせた。 太股まであるTシャツから剥き出しの白い足や、腕にも撫でるように触れていき。 陽射しによって暖かくなり香り立つ藺草(いぐさ)の匂いに微睡む。 「……、…」 何時も目を開ければ同じような光景が彼女を包んでいる。 何も変わらない。 何にも、変わらない。 ただ、『彼』がいるかいないかの違いだけだ。 だから彼女は『彼』がいる以外で好きなのはこの午睡に耽る時だ。 『彼』とこの窓から見上げる空が好きで。 陽射しの暖かさが『彼』の温もりのようだから。 髪を、足を、腕を撫でる風の感触が、まるで『彼』の手で触れられている時のように感じられた。 共に寝転がった時に感じる匂いに、何時も心満たされた。 そう…何時も目蓋を開ければ、『彼』が微笑んでいる。 目蓋を開ければ…開れば、そこには……。 “ ”を宿す目で見ている、 “ ”に塗れた『彼』が…。 「ッ…!」 小さく息を呑んで目を開ければ、陽が射すここから見れば薄暗く感じる質素な室内と少しくすんだ飾り気のない壁がある。 誰もいない。 居るのは…ここにいるのは、一つだけ。 だからあれは、唯の夢。 …唯、それだけ。 きっと…また目を開ける頃には、『彼』が来てくれるに違いないから。 「………、…」 ほんの少し身を捩れるだけでちりん、と高い銀色の鈴の音が鳴る。 その鈴が付いた真っ白な首輪は細い首に付けられており、よれて両肩が剥き出しのTシャツから覗く白い肌にとても映えていた。 それが一体何時頃に、誰が付けたのかは…もう覚えていない。 ただ気がついたらそれが付けられていた。 そして首輪が付けられた後、誰かがその首輪にリードを付けた。 繋がっているリードも白く、それはとても細かった。 本来ならリードというものは必要ない…いや、首輪自体が必要ない筈だ。 付ける意味すらないのにそれでも付ける。 最早それ等は一種のオブジェであり、ある意味“好意”と“哀れみ”からくる顕示欲を表しているものでもあった。      
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