†…Love School…†

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      通り抜けてしまう腕で、君を腕の中に包み込んだ。 本当は閉じ込めてしまいたいけれど…君なら簡単に、この腕をすり抜けてしまうだろう? それでも抜け出さないのは君が優しいから。 ああ……ずるいなぁ、俺は。 君の優しさに付け込んで、こういう事をしてる。 …ゴメンね、一方的に押し付けてばかりで。 けど許して欲しい。 せめて、君に伝えたい想いが、言葉があるんだ。 まだ君が“此処”にいる間に…。 「俺は……君に逢えて、幸せだったよ」 「っ……!!」 小さく君が、息を飲む音が聞こえた。 …こんな近くにいるせいなのかな。 君が動揺している事が顔を見なくても手に取るように分かるよ。 ……俺は、君がこの屋上に縛られていた理由を知らない。 君自身の事も、ここにいる理由も聞いてみたけれど言いたくないみたいだった。 俺の名前も君は知らない。 名前を知られる事は魂の端を掴まれる事だからと言って、知ろうとはしなかった。 だから自分の名前を教えるつもりもないし、俺の名前も教えなくていいと言っていた。 けどね…君がここにいる理由を教えたくないのなら無理に聞こうとは思わない。 でもせめて君の名前だけでも、俺は知りたかった。 一度だけでもいいから、俺の事を名前で呼んで欲しかった。 生きていれば至極当然の欲求だけど……君にとってはそれすら、我儘に入ってしまうのかな…? そう思いながら少し身体を引くと、君は僅かに俯き加減で小さく言った。 「………キミは…変わってるよ……。  変わってる、というか…可笑しい…」 「…そうかな?」 「そうだよ…絶対、そうに決まってる。  …私に……そうやって…言う人、なんだから……っ…」 俺の方を見ずにそう言いながら、少しずつその目元が潤んでいく。 そうしてそれを見られたくないのか、まるで君は俺の胸元に頭を押し付ける様にして呟く。 「…………可笑しいに、決まってるんだから…ッ…!」 すぐ傍で聞こえた君の声は、誰が聞いても分かる程に震えていた。 …君の背に回した腕が、君の身体を通り抜ける事が無ければその髪を撫でて落ち着かせる事が出来るのに。 目元に溜まっているだろう涙を拭う事も、強く抱き締める事も容易なのに。 それが出来ないという事が、とてももどかしかった。 けど…。      
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