第二話「貞子タソと私とバーボンハウス」

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  バーボンハウス「ハイポーション」は、私の住むアパートのすぐ近くにある。 私は大学に入ったばかりの頃から悩みごとができる度にハイポーションへ足を運んでいた。   マスターのショボーンは優しく抱擁力のある人間で、どんなくだらない悩みでも真剣に聞き、考えてくれ、いつも相手の本当に欲しい言葉を返してくれる。 私が大学をズル休みしたときは叱り、私が友達と喧嘩をしたときは何も言わずに濃いめのカシスオレンジを出してくれた。   つーは私が初めてこのバーボンにきたときに端で飲んだくれていた女性で、週三で夜の仕事をしている。私は初めて会ったその日に凄い勢いで絡まれ、鎖骨を甘噛みされた。そのときばかりは私も流石におっきした。 なぜか私が行くと必ずいて、毎回必ず失恋している。一時期毎日通っていたときがあったが、つーは毎日失恋していた。逆に器用な人間である。   まだ時間も早く客もいない為、ショボーンは私にカルアミルクを出すと、カウンター越しに私と向き合った。   (´・ω・`)「はい、おまちどうさま。で、何があったんだい?」  
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