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映理の幼少期はひどく孤独な環境だった。
父親は大学病院の内科専門医。
母親はそこそこ名の知れたファッション誌の専属モデル。
そんな両親の職業柄、親子3人が食卓を共にする機会はほとんど無く、映理の身の回りの世話は通いの家政婦に任されていた。
その家政婦も無愛想で、全てを仕事と割り切るタイプだったから、映理に必要以上に話しかけることも余分な気遣いも皆無だった。
また彼女の作る料理はお世辞にも美味とは言い難く、映理は子供ながらに完食を心がけていたが、彼女の来ない日は次第に自分で料理を学び家事をこなすようになっていった。
さらに冷めていくばかりの両親間の愛情と不和は、映理を精神的に孤独にしていくばかり。
そんな家庭的要素が欠落した環境下で、表面上よい子を演じていた映理の心に闇が巣食い始める。
与えられない愛情への渇望と飢餓――。
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