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小学校でもその中性的な容姿と寡黙さが災いして、男子生徒からは敬遠されていた。
というより普通なら遊びに夢中な年頃の泥臭い子供にとって、映理の美貌と聡明さは近寄りがたいオーラを放っていたのだ。
しかしアイドル並みの雰囲気をかもす映理に女子は好意的だった。
毎日靴箱の中に入っている誰かしらの手紙…。
だが映理はそれに目を通す事もなく、家に帰るなり封も開けずゴミ箱行きにしていた。
『うわべだけの言葉なんかいらない!』
そんな不毛な日々の中、多聞との出会いは映理にとって一種のカルチャーショックだった。
母親の事故死の後、時期を置かず父親が再婚相手として紹介した多聞の母親は、美人だが良妻賢母といった風の実母とは正反対のタイプ。
その母親の背後に隠れ、モジモジと落ち着かなさげな少年がいた。
やがて意を決したように映理の眼前に真っ直ぐ向かい、少年多聞は満面の笑みを浮かべてスッと右手を差し出してきた。
「よろしく、エイリ」
一点の曇りも下心もないストレートな挨拶を生まれて初めてぶつけられ、映理はしばし瞠目した。
まるで異星人とでも遭遇したかのような衝撃に―――。
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