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ピピッ…
口にくわえた体温計が小さく鳴った。
真剣な顔でそれを抜き取った映理は、示された数字を確認して深く嘆息する。
「39.3…かなり高いな。今日は休めっていったのに…」
「大したことねーよ。平気だって。オレ、38度でサッカーの試合出たことあるし…」
「どこがだ?いいから大人しく寝ていろ」
「う~~…」
朝目覚めた時、少し体温が高いと感じたが、まさか寝込むことになろうとは…。
春日多聞、不覚にも風邪でダウンしてしまったのである。
もっとも、夕食にあまりハシをつけなかった多聞を心配した映理が、無理矢理ベッドにつれてきたのだが…
「ただの風邪だからって甘く見るな。下手に動き回ってこじらせたらもっと厄介だぞ」
まるでききわけのない子供を叱るように、強い口調で映理は諭す。
「肺炎でも起こしたらそれこそ入院だ」
枕元に座る映理は厳しい表情を崩さない。
「…だってもうすぐ前期テストの課題が…点数取れなかったら留年…」
発熱のためか、多聞は天井を見上げ、ブツブツと独り言を呟いている。
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