◇不可侵領域◆

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ピピッ… 口にくわえた体温計が小さく鳴った。 真剣な顔でそれを抜き取った映理は、示された数字を確認して深く嘆息する。 「39.3…かなり高いな。今日は休めっていったのに…」 「大したことねーよ。平気だって。オレ、38度でサッカーの試合出たことあるし…」 「どこがだ?いいから大人しく寝ていろ」 「う~~…」 朝目覚めた時、少し体温が高いと感じたが、まさか寝込むことになろうとは…。 春日多聞、不覚にも風邪でダウンしてしまったのである。 もっとも、夕食にあまりハシをつけなかった多聞を心配した映理が、無理矢理ベッドにつれてきたのだが… 「ただの風邪だからって甘く見るな。下手に動き回ってこじらせたらもっと厄介だぞ」 まるでききわけのない子供を叱るように、強い口調で映理は諭す。 「肺炎でも起こしたらそれこそ入院だ」 枕元に座る映理は厳しい表情を崩さない。 「…だってもうすぐ前期テストの課題が…点数取れなかったら留年…」 発熱のためか、多聞は天井を見上げ、ブツブツと独り言を呟いている。
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