◇それぞれの想いⅠ

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「おはよう、多聞」 すでに朝食が用意されたテーブルの向こうで、映理が微笑んでいる。 窓から差し込む朝日より眩しく、肌の白さと相まって透き通るような笑顔――。 昨夜あんなに快楽を共有しあったばかりだというのに…映理は元の・義兄顔に戻っていた。 (適わない…) と多聞は軽く嘆息する。 勉強も家事も…セックスでさえ、およそ映理は完璧だ。 「…オハヨ、映理」 半ば照れ臭く感じながら多聞は椅子に座った。 「起こそうと思ったんだけど、良く眠っていたから」 湯気の立つ味噌汁のお碗を置きながら映理が言う。 どうやら目覚ましの時間をセットし直したのは映理らしい。 「…ったくサァ、なんで毎日講義講義、レポートの連続なんかなぁ~。いい加減ウンザリだよ!」 ご飯を一口頬ばりながら多聞はぼやく。 「大変なのは1年の時だけだよ。進級すれば楽になる。お前文系だろ…」 励ますように映理は言うが、多聞の心中では顕らかな焦りが募っていた。 (オレ、ホントに進級できるのか?) ギリギリで補欠入学できたものの、スポーツ系の頭にはさっぱり入ってこない授業の数々…。
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