571人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう、多聞」
すでに朝食が用意されたテーブルの向こうで、映理が微笑んでいる。
窓から差し込む朝日より眩しく、肌の白さと相まって透き通るような笑顔――。
昨夜あんなに快楽を共有しあったばかりだというのに…映理は元の・義兄顔に戻っていた。
(適わない…)
と多聞は軽く嘆息する。
勉強も家事も…セックスでさえ、およそ映理は完璧だ。
「…オハヨ、映理」
半ば照れ臭く感じながら多聞は椅子に座った。
「起こそうと思ったんだけど、良く眠っていたから」
湯気の立つ味噌汁のお碗を置きながら映理が言う。
どうやら目覚ましの時間をセットし直したのは映理らしい。
「…ったくサァ、なんで毎日講義講義、レポートの連続なんかなぁ~。いい加減ウンザリだよ!」
ご飯を一口頬ばりながら多聞はぼやく。
「大変なのは1年の時だけだよ。進級すれば楽になる。お前文系だろ…」
励ますように映理は言うが、多聞の心中では顕らかな焦りが募っていた。
(オレ、ホントに進級できるのか?)
ギリギリで補欠入学できたものの、スポーツ系の頭にはさっぱり入ってこない授業の数々…。
最初のコメントを投稿しよう!