序の章

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 まもなく時計の針が12の文字に重なろうとしている。  人ひとりいない深夜のさびれた商店街に、コツコツと革靴の乾いた足音を響かせる。  やがてだとりついたボロアパート。ため息一つ吐いてドアノブに手をかける。 "今日も疲れたなぁ……。つうか腹へった。"  開くものだと思って、なんのためらいもなく強く引いたドアは動くことなく、思わずつんのめって頭をぶつけそうになる。 "あれっ!?あいつまだ帰ってねぇのかな……。"  さらにため息をもう一つ吐いて、カバンからカギを取り出し中に入る。
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