心影

3/13
前へ
/47ページ
次へ
オレは長谷川拓海(ハセガワタクミ)。今まさにうなされて目を覚ましたとこだ。 「なんだ・・・今の・・夢か?」 独り言を呟き、ムクッと体を起こした。真っ暗な部屋に電子時計の数字だけが浮かんでいる。 「四時半か・・・もう寝れないな・・・」 そう言って手探りで煙草の箱を探し当て、一本を口にくわえてライターを探しだす。指先に触れたライターを掴み、そそくさとタバコに火を点けた。 深く煙を吸い込む度、小さな灯りが部屋を赤く染める。 漠然とその動作を繰り返し、ちょうど一箱空になる時朝日が差し込んできた。 「さて、準備するかな・・・」 癖になってしまっている独り言を呟き、のそのそと通学鞄に教科書を詰め込み始めた。 ちゃっちゃと準備を済ませると、朝食を取りもせずに家を出た。誰も居なくなった家は嫌にタバコ臭いわりに、生活感はまるでない。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加