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『お兄さまっ』
『……なに?』
よちよち駆け寄るミク
目を細めてよく見ると、髪のリボンがほどけて床まで垂れ下がっている
『危ないよ、』
『う?』
びたんっ
こんな表現が一番しっくりくるかも知れない
僕が言いかけたその瞬間に、ミクは自分のリボンを踏み、真正面から深紅のカーペットに倒れこんだ
『大丈夫?』
多分大丈夫ではないだろうな。十中八九泣くぞ、きっと
駆け寄ってミクを抱き起こすと、案の定ミクは大きな瞳に涙を溜めていた
…鼻が少し赤くなっている
可愛い
『おに…さま…』
『よしよし』
ミクを抱きすくめながら頭を撫でる
すると、僕の首のあたりにミクの涙が数滴落ちた
少しだけ、温かい
『おにい…さまっ、ミク、泣かないもんっ…!』
もう泣いてるよ、なんて無粋なことは、僕は言わない
『うん、うん、そうだね。ミクは偉いな』
『えへへ、』
ミクは着ていた黒いドレスの袖でぐしぐしと少し乱暴に涙を拭い、僕にぎゅっとしがみつく
『あのね、お母さまがね、バラ園の温室にいらっしゃいって!』
『それは、ミクもかい?』
ふるふると首を振り、悲しそうにうつむくミク
『お兄さまだけだっておっしゃってたの』
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