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「次元の街だぁ!?」
「はい…そこに殺してほしい人が…」
世の人々に恐れられている鬼神、その男…『凶』は今、怪しげな和室で依頼人と話している。
一応凶は、忍びの衣を着ているが、武器などは持っておらず、忍びの必須品とも言われる顔の鼻から下を隠すマスクもつけていない。
少し幼く見えるその顔は、年で言うと15~17くらいだろう。
「聞いたことのない名前の場所だな。
それはどこにあるんだ!?」
「ここからずっと北にいった所に洞窟があります。
その中にそういう名前の町があるんです」
凶は頭をかきながらふーんと適当に返事をする。
端から見ると忍びとはとても思えない。
市民の人達と喋る時とのしゃべり方が違うが、多分こっちが素なのだろう。正体がバレないようしゃべり方を分けているのだと思われる。
「ま、いいさ…ソイツの似顔絵と、その街までの地図と、例のものをよこせ」
凶のその言葉を聞き、依頼人の男は目にクマがあり、顎ヒゲを生やしている男の似顔絵と地図、そして小判を包んだ袋を凶に差し出した。
凶はそれを見て小判を数え始める。
「ひぃ…ふぅ…みぃ…まぁいいだろ。
にしてもその街…ずいぶん遠いな。
もう酉の刻だから…今からここを出なきゃ夜明けに帰ってくることはできない…か…。
もう辺りは暗いし…急いで行ってきてやるよ」
凶はそれだけ言うと、色々な武器を持ってきて端からは見えないように衣の至る所にその武器を隠し持った。
「じゃあ…さっさと殺ってくる」
それだけ言うと、凶はすごい速さで一目につかないところを走っていき、街の北側に向かっていった。
※酉の刻…現代で言う午後6時
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