最愛が奏でる泡沫の音色

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窓から見える もう薄暗い空を見ながら電話を 掛ける。 何羽ものカラスが電線にとまって 不気味に鳴いている。 ああ………… 鈴さんが いってきますって言ったのは 逝ってきますってこと だったんだな。 涙が頬を伝っているのを感じる。 手を繋いで息絶えていた 2人の姿が目に焼き付いていた。 突然 カラスがバサバサっと大きな音を 立てて飛んだ。 電話が繋がって受話器から 聞き慣れた声が聞こえる。 手の中で2つになった カルティエのリングをぐっと 握り締めると アタシは 目を閉じて静かに口を開いた。
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