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そんな帝国の首都、ピリム。
「…………」
何も喋らないまま、僕らはリルデで殺されかけたお兄さんに手を引かれて大通りを歩いていた。
お兄さんは返り血を浴びて真っ赤になっていて、周りの人達はヒいているというか…とにかく避けていた。
彼を見ながらひそひそと小言で話している人もいる。
きっと、誘拐だとか何とか言ってるんだろうなぁ…
っとまぁ、お兄さんはそんなこと気にもしてないみたいだけど。
とにかく何も喋らない彼から発言権が得られないまま、僕らはひたすら歩いていた。
…どこまで歩くんだろう?
するとキースが口を開いた。
「…ねぇ、お兄さん」
「あ?」
お兄さんは機嫌が悪そうだ。
それにキースも、殺されかけた相手によく怖がらずに話し掛けられるなぁ…
「これからどこに行くの?」
「…行く当てがねぇし、去年まで餓鬼だった俺一人でお前らの面倒見れる自信もねぇから…
ちょいと助けを呼ぼうかと思ってな」
「面倒?僕らのこと、殺さないの?」
「いろいろ理由があってな、殺す訳にはいかなくなった。
むしろ、守ってやらなきゃならねぇらしいしな」
「らしい?」
「……もういいだろ、さっさと行くぞ」
お兄さんの歩幅が大きくなる。
僕らはまだ8歳の子供だったから、小走りでもしないと追いつけない。
ちょっと苦労しながらも、遅れるまいとついていく。
……何でかって?
それは僕もキースも、
俗に言う、孤児だから。
もうどこにも、僕らの行き場はないんだ。
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