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真黒の服に身を包んだ男が道端に座り込んでいる男――情報屋に小声で耳打ちする。ターゲットの名前を口に出したのを良く思わなかったらしい。情報屋は悪びれもせずに小さく笑うと、葉巻の濁った煙を吐き出した。
懐から紙とペンを取り出すと、ターゲットの情報を次々に書き込んでいく。住所はもちろんのこと、よく出入りする店や好みの女性までこと細かに。
黒服の男はつい感嘆の声を漏らした。
依頼者のこの黒服の男は殺し屋である。あるニッポン人を殺れとの依頼が入ったのでかれこれ数週間追っているが、未だに達成できずにいた。
知らされた情報が名前しかなかったのだ。顔も整形しているらしく、せっかく手には入った写真も全く意味を成さない。
そこでいくつかの情報屋を回ったが、標的ががニッポン人であるせいか全く情報が手に入らなかった。
最後に縋ったのが今目の前にいる男だ。知り合いから最後に教えてもらえた情報屋。
今週中でないと会えぬと聞き、半ば諦め気味で行くことにしたのだ。
『ちょいと遠いぞ。まずブルーノの酒屋をでて左に曲がれ、迷路街にでる。そしたら右に二回左に一回、路地を四つ抜かして右。そこにコルヴォっていう情報屋がいる』
『…信頼性は?』
『さぁ?だが情報量ではコルヴォに勝てる奴はいないな』
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