第一楽章

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「ありがとう、紅莉ならそう言ってくれると思ったよ」 愛桜の顔が嬉しそうに見えたのはきっと私の自惚れじゃないはずだ。 「紅莉はKaratってバンド知ってる?」 「知ってるも何も、私大ファンだよ?」 Karatとは男3人女1人の今人気絶好調の有名バンドだ。 私は、インディーズ時代からの彼らのファンで彼らに影響を受けて高校から軽音楽部に入っている。少しでも彼らと同じ世界を共有したくて。彼らの見てる世界を感じてみたくて。 「ていうか、愛桜が音楽関係の事を口にするなんて驚いた。興味無いって前に言ってたよね?」 そう、愛桜は今どきの高校生の必需品ともいえるアイポットとかmp3とか、そういった類のものはおろか家にコンポすらないというほんとに音楽興味無いです、なお方。 私だったらそんな生活耐えられない。Karatの曲一日に最低3回は聞かないと眠れない!! 「うん、それなんだけどね……」 「まって、愛桜」 「何?」 「それ、話長くなるよね?」 「うん?」 「ならさ、学校じゃなくて場所変えない?こんなうるさい中じゃゆっくり話も聞けないし」 「そうだね、じゃあ私の家に行こうか」 「うん!」 こうして私たちはまだ教室に残っている若干のクラスメイト達を尻目に愛桜の家へと二人肩を並べて連れ立っていった。
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