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幸栄とはいつもこんな感じ。
高校からの腐れ縁だけど、幼少の頃から付き合いのある友達達よりも深い繋がりが、俺には確かに感じられる。
なんて言うんだろ。一緒にいて安心するというか、いつもハイテンションで見てて飽きないというか。
よく分からん。だけど幸栄がいるのが当たり前になってる。
いい加減俺も覚悟決めなきゃなーとは思うんだけど、アイツに“そっち”の感情がないとひじょーにまずい。想像するだけで嫌になる。
「太一! 早くしろーっ!」
まあ今は俺のそんな言い様のない感情よりも仕事の方が優先される訳で、直ぐ様スーツに着替えて外で待っている幸栄の元に急いだ。
☆ ☆ ☆
幸栄の車に乗った途端にまた視界がブラックアウト。
なんだこれ。旧式のテレビよりタチが悪いんじゃねえか?
というかさっきからなんなんだ。いったいなにをすればこうなるんだよ。
「たーいち君。今何時かな?」
また幸栄の声。
途端にまた辺りも色付くかの様に見慣れた光景へと変わる。
ここは、幸栄と待ち合わせする時によく使う公園。
「9時と……2分の1」
見上げた先にある時計の時間を捻って言わせてもらう。
30分も遅刻するとは我ながら不覚。だが不思議だ。謝罪する気にまったくなれない。
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