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正直名前は決めるべき時に決めりゃそれでいい。
今はこうして幸栄と一緒にいれたらそれだけでいいんだ。
他愛もない話で笑えてた、この夜みたいにな。
――ずっと、こうやって笑っていたかった。
だけど神様っつーのは意地悪だ。最悪だ。
俺らから、笑顔を奪ったんだからよ――。
☆ ☆ ☆
「もう、いいだろ」
すでに視界は砂嵐。
つまり“この先”を知ってる俺が意識を支配してる状況だ。
知ってるから、見たくない。
知ってるから、思い出したくない。
そんな願いくらい、叶えてくれよ。
「なんで」
今回は幸栄じゃなく俺の声。
景色は墓地だ。俺の実家の近くの、雑草だらけの墓地。
「親もびっくりする様な結婚式挙げるんだろ? 一緒に子供育てるんだろ? なのにさ、なんでそんな所で寝てんだよ……」
コケが付着している目の前の墓。この下で俺の先祖達や――幸栄が眠ってる。
『ママは産婦人科に行ってきまーす!』
いかにもアイツらしい言葉と、無邪気な笑顔。
それが、最後に見た幸栄。
昨今懸念視されてる飲酒運転。これは本当にタチが悪い。
本人は普通に走ってるつもりなんだろうが、簡単なハンドルミスで悲惨な事故が起きる。
そう。
例えば歩道を歩いてる妊婦を撥ねるとか――。
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