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カランカランと小さな店内に鳴り響く音が、来客が訪れた事を教えてくれる。
おや、今日はまたお若いお客様ですな。
「いらっしゃいませ」
――ここは、しがない女性マスターが営む、小さな小さな喫茶店。
【寄り道喫茶】
☆ ☆ ☆
「私がこの店のマスターでございます。お先に、よろしいですかな? 我が喫茶店にメニューは存在致しません。ああ、いや。メニューはございませんがコーヒーくらいならお出しできますので御心配なく」
一瞬不愉快そうな顔を浮かべた少年に訂正を入れながら、私はペコリと頭を下げる。
まあ、いつも不愉快そうな顔をされるから慣れてるんですけどね。……慣れていいのやら悪いのやら。
「ならコーヒーを」
「はい。かしこまりました」
私がカウンターの中でコーヒーを挽いてる間、少年は店内を見渡す事もせずにただただうつ向いているだけ。
暇を持て余してるのでしょうか。退屈ならばお話でもしましょうかね。
「見たところ、お客様は随分とお若いですねえ。私が言うのもなんですが、なにゆえこの様な場所へ?」
「疲れたから。あと俺20越えてんだけど」
「……御冗談を」
「軽く傷付くぞ」
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