小さな喫茶店

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   ようやくカップに口をつけたかと思えば、少しだけ口に含んですぐに離す。それから口の中でコロコロ転がす様に。  先に言いますがワインじゃありませんよ?   「ふぅん。ブレンド豆か。モカやキリマンジェロとは違うな」    うわあ。ここまで舌が達者な方も初めてですよ。  コーヒー関係の仕事でもしてらっしゃるんでしょうか。   「まあ、腕は確かだな。美味しいよ」   「ありがとうございます」    最初から素直にそう言ってくれたら喜べたんでしょうが、なんだか複雑な心境です。  ……まあコーヒーの事はよしとして、本題に入らせて頂きましょう。   「ぶしつけで申し訳ないのですが、貴方様はこれからどうされるおつもりで?」   「はっ」と鼻で笑った後、青年は悪戯な笑みを私に向ける。   「さっきも言っただろ? 俺は疲れたの。さっさと休みたい」   「そうですか……。よろしければ、お疲れの理由を教えて頂きたいですね。ええ。こんな私でも、及ばずとも少しくらいなら不安や疲れを解消出来るかもしれませんし」    あくまで明るく述べたつもりだったんですが、それは青年には不愉快だったようで、カップを置いて私を睨んできてます。  まあ、さして凄味はありませんけどね。と、失敬失敬。
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