小さな喫茶店

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  「なに言ってんだ。んな事出来る訳が……ねえ、らろ……?」    急に呂律(ろれつ)が回らなくなった青年は、イスに持たれかかったまま眠そうな顔を浮かべてる。  まあ急にっていうか、さっきのコーヒーに一服盛ったんですけどね。私が。  毒とか、そんな劇薬じゃないから大丈夫です。   「ら、らにをした……」    か、可愛い。眠いのに無理して起きてる子供みたいで母性本能が擽られます。  いっそのことこのまま食べたい……おおっと、自重自重。   「御心配なく。貴方様の願いを叶えるだけですので」    首を傾げながら営業スマイル全開。青年はまだなにか言いた気ですが、とうとう最後の力も尽きてカウンターにうつ伏せになって寝始めました。      この方にとっての大事な人。  もちろん私が知るよしもなく、会わせる事なんて出来ません。    ただそれは“現実世界”だけに限って。  このコーヒーに盛ったのは、その人が心から願う事を夢にて叶える事が出来るマジックパウダー。    ――どうか、よい夢を。  そして、貴方様の悩みが少しでも解決出来ます様に――。
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