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☆ ☆ ☆
――ここは?
重い瞼を必死に開けて辺りを見渡してみると、まるで空間そのものが歪んでるかの様。
単純に言うと、放映時間が過ぎた後の砂嵐みたい。なんだこれ? 俺なにしてたんだっけ?
「たいちー。早く起きないと遅刻しちゃうわよー」
声が、聞こえた。
途端辺りの景色が一変して、住み慣れたアパートの一室へと姿を変える。
「ん……? さち……え?」
俺がそう呼べば、女はいつもの様にポニーテールを揺らしながら、ブイサインをして無邪気に笑う。
「はーい。幸栄ちゃんですよー。って、それはいいからさっさと起きんかーっ! 遅刻したら査定に響くでしょー」
んーと。なに?
遅刻? 査定?
「今何時……?」
「そうね大体ねー。エーエム8時5分前ですねー」
……わお。8時半には出勤しなきゃならないのに8時5分前? 電車でも20分はかかるんだぞ。
うん、目が覚めた。
ガバッと起き上がって、ケラケラ笑う幸栄を無視しながら洗面所に駆け込み、直ぐ様顔を洗って歯を磨く。
「なんで早く起こしてくんないんだよっ」
「いやあ」と幸栄。その顔は無邪気な笑みで溢れてて。
「かっわいい寝顔だったからさー。起こす前に携帯撮影会開催してたらもうこんな時間。あらま。イッツミラクル」
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