暗闇の世界

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「うぅ…。」   地震が起きてからどれくらいの時間が経ったのだろう、 健は目を開けた。   「なんだこれ…。」   目の前には何かの破片が散乱していた。 おそらく家具だったものの破片だ。 健は自分の家にいた。 健はやたらと目の前がチカチカすることに気付いた。   「電球がきれかけてんな…。」   「…!?母さんたちは…!?」   健は一緒に家にいた家族のことが心配になり、母親や父親、それに今年高校生になった弟の茂の名前を呼んだ。   遠くからとても小さな声がした。 明らかに健の呼び掛けに反応した声だ。   「茂か!?」   「……にぃちゃん。」   「茂!よかった…今どこだ?自分の部屋か!?」   「わかんねー…全部ぐちゃぐちゃでここがどの部屋かわかんねー…それと…。」   そこで茂は喋るのをやめた。   「どうした、茂!?苦しいのか?ケガしてるのか?」   「違うよ、にぃちゃん…親父とお袋のことだ…。俺の横に親父がいる…。」   「そうか!…それで父さんは無事なのか!?」   「いや…。頭が…頭が…」   茂の声は震えていた。その震える声は父親の死を意味していた。   「そんな…。」   健の頭の中に 急に父親との思い出が流れ込んだ。   「父さん…。」   健は泣いた。しかし、いつまでもこのままでいるわけにもいかない。そういう思いが健を動かした。   「母さんはどうなんだ?それと、俺は動けるから今からお前のところにいく。声を頼りにな。ちょっと待ってろよ。」   そう言い終わった瞬間 部屋が暗闇に包まれた。部屋というより、世界が暗闇に包まれたという表現が正しいのかもしれなかった。   健にはわからないことだが 時刻は午前3時をまわったところだった。
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