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大地は実りの秋になっていた。
隣国グラードとの戦は長引き、この王国の辺境にまで、影を落としていく。
「銀色の魔法使いよ。戦に行った息子は、いつ頃、帰って来るんだい?」
「それは……、私にも、わかり兼ねることですが、無事にいられるよう、念じましょう」
彼は、杖を天に向け、呪文を唱えた。女は両手を組み、息子の無事を願い膝をつく。そして、魔法使いに感謝の言葉を送っていった。
魔法使いにとって、この言葉こそが、なによりの幸せであり、生き甲斐であった。
彼は腰まである、銀色の髪を風になびかせて、小さな“目覚めの森”の家に帰って行く。
「お兄さん……助けて」
「どうしたのだ!血が出ているじゃないか!!」
助けを求めて来たのは、黒髪の少年だった。
「これは、魔物に付けられた傷!!早く清めなければ。直ぐに助けてやるから、頑張るんだ!」
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