睦月 ~期待~

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今日まで私の人生は、はっきり言ってパッとしなかった。それはやっぱり、恋愛という人生には欠かせないスパイスが足りてなかったからだと思う。 中高一貫で、中堅の女子校通い。 中学の時は、男といったらジャニーズ。現実で付き合えると信じてライブ代に投じた金額は底知らず。 高校になると流石にそれはなくなったけど、出会いなんて女子校じゃ皆無に等しい。 試しに割と若くてソフトマッチョ(だけど顔は見栄晴似)な体育の渡部先生を好きになってみたけど、気付いたらクラスの半分が渡部先生を好きだった。本当みんなが飢えたメスハイエナに見えたよね。 これじゃいけないと恋する為に受験勉強し、何とか色恋沙汰が盛んな大学に合格したけど、変なもの好きな私は、サークル選びをしくじった。 北関東同好会なんていうマニアックなサークルに入っちゃったもんだから、全然素敵な男性はいないし、飲み会も場末の飲み屋でししゃもとドブロクだよ? いいとこのぼっちゃまと外車でドライブデートなんて夢は今いずこ。律儀にサークルに参加して、ポンコツトラックで栃木の畦道を走ってるのが現実。 こんな事じゃ一生男性と付き合えないかもしれない。下手したら結婚も出来なくて、修道女でもないのに一生バージンかも… 一抹の不安を抱えたまま、私は二十歳を迎えてしまった。 ティーンエイジャー時代を浮いた話一つ無しで終わらせたという事実は、恥じるべき事。 だって周りのみんなはもう、鼻血もんの大人な会話をしてる訳で。 私は、アオカンの事を「聞いた事無い羊羹の名前ね」と発言してしまった事で、お子ちゃまのレッテルを貼られてしまった。 どうにかして私も彼氏を作らなければならない。そう意地になってた時に届いたのが、どっかの着物会社からの、成人式の振り袖案内だった。 成人式… 何かのドラマでこんな事言ってたっけ。 「成人式は、都合の良い合コンである。」 これはチャンスかもしれない。 昔いじめられっ子だったあいつが、イケメンになって目の前に現れる。 そんな少女マンガのような事を期待しちゃうのも、無理ないでしょう? 無論、イケメンを手中に収めるには、私自身魅力も高めなきゃいけない。 でも大丈夫。私は、ビル・ゲイツ位抜かり無い女。 イケメンに成長した同級生と見合う女性になる。 「成人式で勝ち組に」プロジェクト、発足。 そう。ここから、私の猛烈な自分磨きが始まったのだ。
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