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「誕生日おめでとう、飛鳥!ケーキ買ってきたから皿、出しといて」
俺がケーキの入った箱を飛鳥に見せると、わぁっと飛鳥は目を一気に輝かせた。
「うん!ありがとね、お兄ちゃん!」
すると、飛鳥は2階のリビングに向かって走って行った。
俺もそれについて行き、リビングにある四つの内の一つのイスに腰掛けた。
「夜はもう食べたのか?」
「うん、食べたよ!お兄ちゃんのもテーブルにあるから!」
テーブルを見ると豚の生姜焼きと程よい程度に切られたキャベツとごはんがあった。
妹を待たせないためすぐにそれらを食べ終えケーキを四等分に切った。
「父さんは?」
リビングのどこにも父の姿はない。
「今日は帰れないって!」
あの野郎、娘の誕生日にも顔出さねぇとはな。
いっぺん顔面に裏拳くらわしたろか?
「母さんは?」
「今日はもう寝るって!」
「…ッ!」
うちの親はどいつもこいつも!
娘をなんだと思ってやがんだ!
そんなことにも関わらず飛鳥はなんて強い子なんだろう。
こんなにも笑顔を絶やさないなんて…
「どうしたの、お兄ちゃん?」
気づいたら俺は飛鳥を抱きしめていた。
飛鳥の柔らかい温もりが俺に伝わる。
なんてちっちゃいんだろう。
力を込めたら壊れてしまいそうだ。
それなのに、なんて強い子なんだろう。
俺よりも大人だ。
「もう我慢するな。兄ちゃんがそばに居るから。兄ちゃんにだけは素直になれよ。お前は俺が守ってやるから」
「お兄ちゃん…?」
俺はいつしか泣いていた。
くそっ、妹は泣き言一つ言わないのに…
なにが守るだ!
俺はいつも飛鳥に救われてるのに。
だけど、俺の存在がもしも飛鳥の支えに少しでもなるなら俺は喜んでなんでもしよう。
「お兄ぢゃん泣がな…い゙で!」
飛鳥は俺を抱き返してきた。
あぁ、飛鳥まで泣いてしまった。
俺のせいだな。
「大丈夫、泣いてなんかいないよ。ゴミが目に入っただけ…」
我ながら見え透いた嘘だな。
「ほん゙ど?」
「あぁ、ホントだ」
俺の嘘を信じたかはわからないが飛鳥は涙を拭いて笑ってくれた。
ごめんな、弱い兄で。
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