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‡ライオンのアイリス‡
ある国にとても強いライオンがおりました。
その強さと荒々しさでライオンは好き勝手に生きてきた為に友達がいません。
むしろ友達になろうとした動物を食べてしまうくらいです。
ある時、小鳥たちと戯れるカバを見て、ライオンは羨ましくなり、「なぜカバくんはそんなに友達が多いんだろう。俺なら小鳥を食べてしまう」と呟きました。
するとライオンの前にアイリスの花の妖精が現れ、彼にこう言います。
「貴方には優しい心がないから友達ができないのよ」
それを聞いたライオンは、どうすれば優しい心を手に入れられるのか尋ねました。
妖精はライオンに一匹の子ウサギに会わせます。
「このウサギを立派な大人にさせることができたら、貴方に優しい心をあげましょう」
それからライオンはウサギを食べたい気持ちを我慢して、舐めて毛繕いしてあげたり、ウサギが食べる植物を採ってきたりと毎日懸命でした。
そんなライオンの姿を見て、何も知らないウサギは言います。
「いつも私のためにありがとう!」
ライオンはその言葉に、今まで感じたことのない気持ちで心がいっぱいになりましたが、本当は自分のためにウサギの世話をしていることに何ともいえない虚しさが込み上げました。
月日が経ち、ウサギが立派な大人になったアイリスの花が咲く春の季節。
再びライオンの前にアイリスの妖精が現れると最後に試練を与えると言いました。
「立派になったウサギを食べることができたら約束通り優しい心をあげましょう」
ライオンは戸惑いましたが、優しい心が欲しくて欲しくて…目の前のウサギを食べようとしましたが、ライオンは口を開けて牙を見せるだけで、それ以上何もできません。
しかし、ウサギは「ライオンさんが幸せになれるなら、どうぞ私を食べて下さい」と言ったのです。
ライオンはウサギの優しさに涙を流し、ウサギを食べようとした自分を呪うとウサギに「友達になりたかった」と告げて、谷底に落ちていきました。
ウサギが泣き崩れて暫く経った時、谷底から大変大きなアイリスの花が伸びてきて、その上にはライオンが眠っています。
それは妖精の魔法によるものでした。
妖精はライオンに優しい心が咲いたかどうか、試していたのです。
本物の優しい心を手に入れたライオンは、その後ウサギと一緒にたくさんの友達を作って、仲良く幸せに暮らしました。
おしまい
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