矛盾

2/4
前へ
/25ページ
次へ
誰かが話す。 誰かが見る。 誰かが話す。 誰かが見る。 気が、身体の芯に集中し、熱くなる。 何もわからないのなら、話すのはやめてほしい。何もわからないのなら、見るのはやめてほしい。何も分からなければ、関わってほしくない。 でも、僕は待っている。 「…それは、矛盾だらけな世界だね」 顔をあげる。 「…そうか、な。そうとは思わないんだけど。」 美しいであろう黒髪を隠すのは、茶色の帽子。存在が透明な、影みたいな、20代いっているかいっていないかくらいの男性。 ──色が、ない。まず僕はそう思った。 その男性は、口を開いた。薄い唇が、言葉を紡ぐ。 「そうでしょ?君が望んでいないことをしたら、君が望んでいる人が前にいても、君には苦痛としか受け取らないのだから」 男性長い指が艶やかに顎へと動く。 どうやら癖らしい。 「…『君』って何回も出てて、話している意味がうまくつかめないんだけど」 「ははっ、君が本気でそう言っていたなら傑作ものだね。つまりは、大好きな友達がテストで20点をとったとき、その時点で君のテストは10点以下に成り下がってしまうということさ」 「…そっちの方がわからないな」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加