4人が本棚に入れています
本棚に追加
誰かが話す。
誰かが見る。
誰かが話す。
誰かが見る。
気が、身体の芯に集中し、熱くなる。
何もわからないのなら、話すのはやめてほしい。何もわからないのなら、見るのはやめてほしい。何も分からなければ、関わってほしくない。
でも、僕は待っている。
「…それは、矛盾だらけな世界だね」
顔をあげる。
「…そうか、な。そうとは思わないんだけど。」
美しいであろう黒髪を隠すのは、茶色の帽子。存在が透明な、影みたいな、20代いっているかいっていないかくらいの男性。
──色が、ない。まず僕はそう思った。
その男性は、口を開いた。薄い唇が、言葉を紡ぐ。
「そうでしょ?君が望んでいないことをしたら、君が望んでいる人が前にいても、君には苦痛としか受け取らないのだから」
男性長い指が艶やかに顎へと動く。
どうやら癖らしい。
「…『君』って何回も出てて、話している意味がうまくつかめないんだけど」
「ははっ、君が本気でそう言っていたなら傑作ものだね。つまりは、大好きな友達がテストで20点をとったとき、その時点で君のテストは10点以下に成り下がってしまうということさ」
「…そっちの方がわからないな」
最初のコメントを投稿しよう!