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「わからないのなら別にいい。たぶん、僕より君のほうが知っているだろう?その矛盾、はね」
男性の目が細くなる。茶色の帽子が少し邪魔だと思った。少しだけ。
男性は続けた。
「君が望んでいるのは、何らかの…君からの試験、といっていいのかな?人間観察、といった方がいいのかもしれない──をくぐり抜けたものでなければいけない。そのためには、どうしても君を見なければならない。話さなければならない。じゃなければ君が望んでいることを実行するのは不可能だ。どうしてそれが嫌だと言うんだい?それをしなければ、待っている人は来ないだろ?」
──あぁ。その通りだ。
だが、矛盾している。
矛盾だらけだ。
「…僕は、見られることも話されることも、大嫌いだ。僕を映す目を持つ人が増えれば増えるほど、『僕』という存在がズレてくる。それが堪らなく嫌なんだ。」
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