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「なぁ、ワカ」
七月十二日。七月十三日を見たのなんていつ以来?
毎年来るはずの七月十三日。私はここ最近それを見た覚えがない。
1+1=2 その答えが絶対であるかのように彼は来る。
三城真祐、私の幼馴染だ。
幼稚園からずっとおんなじクラスという切っても切れない仲。
たぶん、これも神様の仕業だったんじゃないかなんて最近勘ぐっている。
色素の薄い短い髪、同色のらんらんとした瞳、すぅっと通った鼻筋、たぶん美形に入る顔。
「ヒロ、どうしたの?」
本当は無視して逃げ出してしまいたい。
でも、そんなことしたらろくでもない未来が待っていること、わかりきっているから。
次の授業の英語を引き出しから取り出しながら聞く。
笑顔で接しなくちゃいけない。そうじゃないと、ヒロの未来がなくなってしまうから。
「今日の放課後、さぁ。時間ある?」
「ないけど、恋愛相談?」
茶化すように言ってやればヒロはぎこちなく笑って。
わかってる、本当はそんなことじゃないってこと。
「んなわけねーよ。んじゃ放課後、屋上に来てよ」
「わかったよ」
ヒロはまた笑うと、友達のほうに行ってしまった。
さらさらとした彼の髪が揺れているのをなぜか切なく感じた。
「何話してたの?」
ぶすっ、とふてくされたような声が聞こえる。
「謙一」
ヒロから目を離すと、ふてくされた顔の謙一が。
ガラス越しの目は不満を訴えている。
「俺の謙一に手ぇだすなだってさ」
「うは、丁重にお断りしとくわ。俺には若奈がいるし」
私と彼、日高謙一は付き合って一年になる。(謙一が思っている時間で換算すると、の話だが)
今まで特に大きな喧嘩もなく、順調なカップルだ。
「ちょっと真祐と話してから帰るから、教室で待ってて」
「ああ」
ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴り、私と謙一の会話は終わった。
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