セツナゴコロ

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帰りのHRが終わるや否や、葉が教室を飛び出す姿が目に入った。 こんな嫌な天気の日にまさか、あのお気に入りの丘には行かないだろう…と思ったが、案の定いた。 葉が此所へ来る時は何かしら理由がある。僕もそうだ。 この場所は僕等にとって特別な場所だから。 「……ハオか?」 びっくりした。 葉にはいつも驚かせられる。 「…よくわかったね。今日は小雨と言えどかなり冷えている。風邪、退いちゃうよ?」 「そうなったら、そうなっただ」 「葉らしくないね」 「…そうだな」 本当に葉らしくない。 「傷、どうしたの?」 「じいちゃんと喧嘩した」 「嘘だろ。朝は無かったじゃないか」 「…きっとお前が気付かなかっただけだ」 「…本当?」 「おう。友達ならよく見とけよな」 解りやすい嘘。 でも、気付かないふりをして笑う僕。 「ははっ。何時もの葉だ」 「…何時ものオイラ、か…」 「ん?」 「いや、何でもねえ。帰るぞ」 「あ、ちょっと待ってよ!」 あの日は気付かないふりをしてすんだ。いや、すましたんだ。 僕が気付ていないと思っているのだろう。あの一件以来、毎日の様に傷がつく葉がイジメにあっていることを。 でも、僕はとっくのとうに解っていて、傍に居たいがために現実から目を反らした。 その最低な自分の姿に気付くまでに、また時間はかからなかった。 アメリカ行きを考え始めたのは、この小雨の日からかもしれない。 ⇒END *
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