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物心ついた時から、俺は父さんと二人きりだった。
俺が生まれてすぐに母さんと離婚したらしい。
出張の多い仕事の為、俺は父さんの妹夫婦に預けられる事が多かった。
そんな俺に突然新しい母さんが出来た。
仕事先で出会ったらしい。
その新しい母さんは一人の子供と一緒だった。
俺より少し背が高くて、髪を短くカットした男の子…の様に見えた。
実際服装もTシャツに短パンだったし。
けど、その子の自己紹介を聞いて、それが間違いだと知った。
「しき」
「え…?」
「あたしの名前。君の名前は?」
「れ、れーいち…」
「そっかあ!カッコいい名前だね!じゃあ今日かられーいちはあたしの弟だね!あたしの事はしきお姉ちゃんって呼んでね!」
「しき…お姉ちゃん…お姉ちゃん!?」
俺が大声を出して驚いたのを見て、父さんと新しい母さんは大笑いした。
「ほぉら、言ったでしょ、織?そんな格好してると男の子に間違えられるって」
「だ、だって、この格好の方が動きやすいんだもん!てか、あたしの事男だと思ったのか、お前!」
そう言って俺の頬を抓る織。
「ひょ、ひょんひゃひゃっひょうひへるひょまへははふひ!(そ、そんな格好してるお前が悪い!)」
負けじと俺も織の頬を抓る。
「ひゃ、ひゃひふるほほう!(な、何するのよう!)」
互いに抓り合う姿を見て、父さんと新しい母さんは再び大笑いをした。
温かくて、くすぐったい。
そんな気持ちに包まれたんだ。
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