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―――木曜日
「で、結局殴っちゃったわけだ」
「だってそれは真也が生意気だから……」
昼休み、麻衣はクラスメイトと昨日のことを話していた。
殴ったと言うと、彼女は黒髪のショートカットを揺らしてわざとらしくため息をついた。
「もう~好きなんでしょ~?素直になんないと」
「だっ!誰があんなヘタレ!」
「バレバレだよ麻衣っち、好きならせめて私ぐらい攻めないと」
「いや……アンタ程のことはフツーできないよ」
何せグラウンドに石灰で告白文書くような子だ。
噂では女体盛りを敢行したとかも……
「そんなことよりさ、私がアンタに相談したのはコッチなんだけど」
「えっと、ラブレターだっけ?」
「……ぽい」
麻衣は彼女に封筒を見せた。差出人の名前なし、本文は歯の浮くような甘ったるい文章が延々と書きつづられていて、最後は「体育倉庫で待ってます。」でしめられていた。
「でも断るんでしょ?桜庭くんしか興味ないもんね」
「断るつもりだけど……後半は同意しかねる」
「もう~テレ屋さん♪あっ!先輩と約束してたの忘れてた!ごめん麻衣っち、結果は教えてね!んじゃ☆」
シュタっと左手を挙げた彼女は、軽快な足取りで教室を出て行った。
残された麻衣は、封筒を器用にクルクル回しながらどうやって断るかと考えを巡らせていた。
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