冬と受験と恋心

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「あ~あ……」   急いで拾い集める真帆。 恥ずかしかったが、周りに誰もいなかったので幸いにも見られることはなかった。 拾い終わった真帆は、もう一度カバンの中身を確認した。 筆箱、アメ、受験票……   「が、無え!?」   受験票が無い。 そんなバカな、もう道には何も落ちてないのに。   まさか……   急いで橋の下を覗くと、そこには川の真ん中をゆらゆらと流れていく紙が1枚。 明らかに受験票。   「ま、待って!」    真帆はカバンを肩にかけ直して走り出した。 橋を渡りきって土手に降り、受験票を追走する。 しかし、川幅が広くてとてもじゃないが手は届かない。 飛び込もうにも動きにくい制服では溺れるのは目に見えていた。 真帆の足から力が抜ける。 その場にぺたりと座り込んでしまった。   「待ってよぉ……」   視界が滲む、頭の中ではどうしようどうしようどうしようどうしようと思考がループしていた。 その時。   「どうした?」   後ろから声をかけられた。  
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